23.法令上の取り扱い
介護サービスと個人情報保護
名前や電話番号、生年月日といった、個人が特定され、且つ経済的な悪用等につながる個人情報と、介護サービスの利用者やその家族の身体的情報、家庭状況等についての個人情報とは漏えいした場合や取扱い上の問題に特徴的な違いがあります。
本稿ではこの違いを中心に、介護サービスにおける個人情報取扱いの注意点を改めて考えてみたいと思います。
法令上の取り扱い
個人情報保護法においては、取り扱う個人データの数が過去6ヶ月に一度も5,000件を超えたことがない小規模事業者は、個人情報取扱事業者としての義務等を負わないということになっていますが、個人情報保護法上の義務等を負わない場合であっても、情報の不適切な取扱いにより、権利を侵害した場合には、民事責任を問われる可能性もあります。
5,000件という件数は事業者単位でカウントし、現在サービスを利用している利用者とその家族、職員、ボランティア、取引相手およびこれらの過去の保存しているデータ等も含まれることから、複数の介護施設や在宅介護サービス事業を営む事業者は個人情報取扱事業者に該当する場合もかなりあります。
また、規模の如何を問わず、介護事業者は、取り扱う個人情報が多数の利用者やその家族について、他人が容易には知り得ないようなセンシティブな個人情報を詳細に知り得る立場にあり、個人情報の適正な取扱いが強く求められる分野であることから、監督官庁である厚生労働省が「福祉関係事業者における個人情報の適正な取扱いのためのガイドライン」ならびに「医療・介護関係事業者における個人情報の適正な取扱いのためのガイドライン」を示して、その内容を遵守する努力を求めています。
当然のことながら、個人情報取扱事業者であるかどうかに関わらず、社会福祉法や身体障害者福祉法等の介護事業者に適用される関係法令及び関係通知における個人情報保護に係る規定等を遵守しなければならないことはいうまでもありません。
ガイドラインでは、介護関係事業者における個人情報の取扱いに関する各種取組に当たっては、事業者で取り扱っている個人情報はどのようなものがあるか明確にした上で、
- 法違反状態となることがあるか(利用目的の特定をしているか等)
- 必要な対応が求められる可能性があることは何か(開示の求めがあった場合の手続きは決まっているか等)
- 問題が生じた際に、対応が求められるものは何か(個人情報の漏えいが生じた場合、院内の連絡体制は決まっているか等)
- 継続的に取り組むべきものは何か(従業者への教育、研修をどのように行っていくか等)
- 今後、必要な時期に改善していくべきものは何か(委託契約に個人情報の取扱いについて記載する等)
など、取り組む必要がある事項を整理し、優先順位に従って取組を進めていくことを求めています。
なお、ガイドラインとして「福祉関係事業者における個人情報の適正な取扱いのためのガイドライン」と「医療・介護関係事業者における個人情報の適正な取扱いのためのガイドライン」の2つがありますが、前者は主として、障害者福祉、児童福祉関係の事業者を対象としていますので、高齢者福祉サービス以外に、障害者福祉サービスや児童福祉サービスを行っている事業者の場合は、両方のガイドラインの対象となりますが、高齢者福祉サービスのみを行う事業者は後者のガイドラインを遵守していれば足りることになります。
また、「医療・介護関係事業者における個人情報の適正な取扱いのためのガイドライン」の対象となる「介護関係事業者」とは、介護保険制度によるサービスを提供する特別養護老人ホームなどの介護保険施設や、訪問介護事業所などの居宅サービス事業を行う者だけでなく、介護保険の指定を受けずに有料老人ホームを経営する者や、養護老人ホーム、ケアハウス等も、広く「介護関係事業者」に該当し、このガイドラインを守らなければなりません。
そして、法やガイドラインに基づく指導・助言が国や各自治体が行う行政監査で行われ、情報公表制度や第三者が行う評価制度においても個人情報保護の取組み状況を監視し、評価されることになります。
- 個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)
- 平成15年5月30日 公布
- 平成17年4月1日 全面施行
- 福祉関係事業者における個人情報の適正な取扱いのためのガイドライン
- 平成16年11月 厚生労働省通知
- 医療・介護関係事業者における個人情報の適正な取扱いのためのガイドライン
- 平成16年12月 厚生労働省通達
24.介護サービスにおける個人情報の範囲
個人情報とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日、その他の記述等により特定の個人を識別することができる次のものが該当します。
- 氏名、性別、生年月日等個人を識別する情報
- 個人の身体、財産、職種、肩書き等の属性に関して、事実、判断、評価を表すすべての情報
- 映像、音声による情報
- 死者の遺族等の生存する個人に関する情報(死者個人の情報は法律の対象外)
上記に該当するものを介護サービスで取り扱われる情報に当てはめると、介護現場で使用している記録等は殆どすべてが個人情報になります。
これらの個人情報をコンピュータを用いて検索することができるように体系的に構成した情報の集合体や、コンピュータを用いていない場合であっても、紙面で処理した個人情報を一定の規則(例えば、五十音順、生年月日順など)に従って整理・分類し、特定の個人情報を容易に検索することができるよう、目次、索引、符号等を付し、他人によっても容易に検索可能な状態においているものは「個人情報データベース等」と言い、これを構成している個々の個人情報を「個人データ」と言います。したがって、介護関係記録については、通常、媒体の如何にかかわらず、体系的に整理され、特定の個人情報を容易に検索できる状態で保有していることから、「個人データ」に該当します。
記録類の中では、“こんなものも”と思われるものもあり、ちょっとした取扱い上の不注意で個人情報漏えいにつながるケースも少なくありません。例えば、デイサービスの送迎バスに置いておいた「送迎表」や配食サービスの「配食サービス利用者リスト」が送迎中や配食中に紛失したり、ヘルパーが訪問先に「訪問介護予定表」を置き忘れ、他のサービス利用者情報が漏れたりすることがあります。
2.の「個人の身体等に関わる事実、判断、評価を表す情報」では代表的なものとして「利用者基本情報」や「ケアプラン」「ケース記録」「アセスメントシート」「介護サービス計画書」や「リハビリ評価表」等、多くのものが存在します。
3.に該当するものとして、『施設だより』などに載る写真、廊下に掲示してある行事の際に撮った写真、利用者や家族、職員同士でやり取りした携帯電話の留守電録音内容などがあります。
このように、介護サービスは他の事業と異なり特定の範囲だけで個人情報を扱うのではなく、事業の殆どの場面で個人情報を使用してサービスを行っているので、対象は広範にわたるというのが特徴です。
なお、介護サービスにおける個人情報の範囲として、利用者自体の個人情報ばかりでなく、利用者の家族に関する情報、介護職員等従業者の情報、さらには取引業者の従業者の情報も含まれます。前述の個人情報保護法の対象となるか否かの件数カウントでは、これら家族や従業者数がカウントされます。
従業者の情報については、「雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針」(平成16年7月1日厚生労働省告示第259号)、「雇用管理に関する個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項について」(平成16年10月29日通達)にその内容が示されています。
25.介護サービスにおける個人情報の特徴
情報の一般的な性質として、
- 情報は一度手にすると複製もでき、何度でも使え、いくら使ってもなくならない
- 大量に、且つ不特定多数の人の間でやり取りができる
- 累積すればするほど情報としての価値が高まる
- 他人に伝えても自分の手元にも残る
- 持ち出されても気づかないことがある
等がありますが、この情報が個人情報ということになると要注意であり、更に介護サービスにおける個人情報ということになると更に注意が必要です。
介護サービスの中で取り扱われる情報の特徴と重ね合わせますと、前項でも述べましたように、
- 介護サービスは他の事業と異なり特定の範囲だけで個人情報を扱うのではなく、事業の殆どの場面で個人情報を使用してサービスを行っているので、対象が広範であること
- 取り扱う個人情報が、多数の利用者やその家族について、他人が容易には知り得ないようなセンシティブな詳細な個人情報であること
- 良質なサービス提供のためには、他人が容易には知り得ないようなセンシティブな詳細な情報を十分に使わなければならないこと
- 第三者提供を始め、組織外に持ち出して使用するケースがあること
- 情報の使用者がサービス提供の現場が中心であり、管理が難しいこと
- 情報の種類が電子媒体におけるデータ的なものだけでなく、紙媒体、あるいは職員の頭の中にある情報も含めて種類が多様であること
- 小規模な事業が多く、そのうえ、労働集約的な業務が中心であるため、IT化とその安全管理が遅れていること
- 情報の種類が電子媒体におけるデータ的なものだけでなく、紙媒体、あるいは職員の頭の中にある情報も含めて種類が多様であること
などがあります。
介護サービスにおける個人情報は、金融・信用や電気通信の分野と比較して、情報管理ライフサイクルが長く、センシティブな個人情報を取り扱う割に、投資に回せる予算にも限度がある。かといって、個人情報がいったん漏えいしたら、悪用されて二次被害が発生する可能性が高い。よって、一般的に情報が持つ上記1.~5.の特徴が個人情報管理の難しさと対応の重要さにつながっています。
例えば、ケアプランやケース記録は、継続性のある情報を積み重ねていくことで利用者の現状に即したサービス提供や今後必要なケアの方向につなげていくことができるものであるため、一定の期間使い続け、保管する必要があります。このことは、累積された情報としての価値が高まる一方で、漏出した際の影響の大きさを高めることにもなります。
また、安全で良質な介護サービスを提供するためには、取扱いに注意を要する機微な情報を関わりのある多くの人が使わなければならないという状況があります。例えば、利用者の転倒防止のために、ふらつきや覚醒状態が原因になる転倒事故を防ぐために、向精神薬を服用している利用者であることを把握して介護や見守りをしなければならない場合があります。この情報は利用者に関わる全ての職員が共有していなければなりません。そこには雇用形態を問わず、新入職員を含めた全階層、全職種の職員の個人情報保護の強い認識が求められます。
情報の形態についても、情報を使用する場面が広いため様々なかたちをとります。サービス担当者会議で使用される個人情報は複写された紙媒体と口頭で伝え合う情報、事業所に直接戻らない訪問介護のヘルパーがFAXや電話もしくはメールなどで報告する利用者情報、理美容や調理を外部委託する場合に業者に提供する利用者情報、ボランティアが使用する利用者情報等、管理が難しいものが多々あります。
以上の、情報が持つ特性と介護サービスで使用する情報の特徴を十分に踏まえた個人情報保護対策が必要です。
介護サービス | 金融・信用・電気通信分野 |
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26.介護サービスの個人情報使用上の留意点
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第三者提供をする場合の同意取り付け方法
- 個人情報保護法では、第三者提供の例外に該当する場合以外の第三者提供には本人の同意を得ることを求めていますが、文書で同意を取り付けることは求めていません。しかし介護関係事業者については、介護保険法に基づく指定基準により、サービス担当者会議等において利用者または家族の個人情報を使用する場合は、利用者及び家族から文書による同意を得ておく必要があることに留意が必要です。方法としては、サービス利用開始時に適切に利用者から文書による同意を得ておくことが望まれます。
- 実習の学生の受け入れのように第三者に個人情報を提供する場合には、あらかじめ文書により利用者又は家族の同意を得ておく必要があります。
- 介護サービスを提供するに当たり、利用者の病状等によっては、第三者である家族等に病状等の説明が必要な場合もあります。この場合、利用者本人に対して、説明を行う対象者の範囲、説明の方法や時期等について、あらかじめ確認しておくなど、できる限り利用者本人の意思に配慮する必要があります。
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第三者提供以外の利用時の同意の取り付け
施設内の廊下や掲示板に行事等の写真を展示したり、「施設だより」やホームページ等に個人を識別できる写真を掲載する場合は、本人の同意が必要です。
また、施設内で介護事故研究会等で利用者の個人情報を使用する場合は、利用者本人の同意を取り付ける必要はありませんが、施設職員以外の者が参加すると、第三者提供になりますので同意が必要になることに注しなければなりません。
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個人情報の利用目的の通知
個人情報保護法第18条第4項第4号で、「個人情報の取得の状況からみて利用目的が明らかなもの」は、本人通知や公表を不要としていますが利用者等に利用目的をわかりやすく示す観点から、ガイドラインでは施設内に掲示等により公表することを求めています。
また、利用目的は個々の個人情報を記載する書類ごとに特定する必要はありませんが、利用者等が十分理解できるよう受付時に注意を促したり、必要に応じて受付後に改めて説明を行ったりするほか、利用者等の希望があれば詳細な説明や当該内容を記載した書面の交付を行うなどして、個々の利用者や家族のニーズに適切に対応していくことが求められます。
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業務委託をする場合
- 個人データの取扱いに係わる業務を委託している場合には、委託する業務の内容により、利用者等の関心が高い分野については、委託先の事業者名を公表することをガイドラインは求めています。なお、委託先の事業者の担当者名、責任者名等については、当該本人の個人情報になりますので、それらを公表等する場合には、本人の同意を得る必要が出てきます。
- 個人データを直接取り扱わない業務委託の場合であっても、清掃、理美容等利用者の個人情報に接する可能性は多々ありますので、業務委託に当たり、委託契約書に個人情報の取扱いに関する事項をどのように記載するかについて、検討する必要があります。
27.個人情報のマネジメントシステム
情報管理のマネジメントシステムには国際規格『ISO27001(JISQ27001)』、財団法人日本情報処理開発協会(JIPDEC)が経済産業省の個人情報保護ガイドラインに準拠した『プライバシーマーク制度』があり、他にも同じく経済産業省が認定した一般社団法人日本個人情報管理協会(JAPICO)による『JAPICOロゴマーク付与制度』があります。
いずれも、組織のマネジメントとして、組織が情報の取り扱いを適切に行うための仕組みを構築し、運用するための内容を示し、認証するもので、リスクアセスメント、セキュリティレベル決定、プラン作成、資源配分、システムを運用するということではほゞ同様です。『プライバシーマーク制度』と『JAPICOロゴマーク付与制度』は個人情報の取り扱いを対象にしています。
個人情報の取り扱いは法律の正しい理解やガイドラインの遵守はもちろんですが、状況が変化する中で様々な場面に則して問題のない行動がとれるかどうかは、組織の中にマネジメントシステムとして個人情報保護の方針が徹底し、教育が継続的に行われ、物理的管理も維持されているか否かに関わってきます。「介護サービスにおける個人情報の特徴」の項でも述べましたように、介護サービスの現場では、接するもの、取り扱う書類の殆どすべてが個人情報です。それを多数の多様な雇用形態の職員が取り扱っているといった実態があります。一部の職員が法令やガイドラインを知っていても実際の取り扱い上のリスクは軽減しません。組織の中に根差した仕組みとしての個人情報保護体制が必要です。
上述しました個人情報マネジメントシステムでは次の様な大きな枠組みでシステム化を図ります。
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個人情報保護方針の制定と維持
- 個人情報保護方針の文書化
- 個人情報保護方針の周知
- 個人情報保護方針の見直し
個人情報保護方針を定め、全従業員へ周知を図り、定期的な見直しをし、維持する。
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個人情報の特定
- 個人情報の調査
- 個人情報の見直し
部門ごとにすべての個人情報を洗い出し、情報の内容、入手先、保管形態(電子媒体、紙の別)や保管場所、廃棄方法、改ざん・紛失・漏えい・破壊などのリスク評価等を行う
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個人情報保護の計画
- 個人情報関連法令およびその他の規範の適用と維持
- 個人情報保護のための内部規定の策定と維持
- 内部規定順守のための教育および監査の計画立案、文書化と維持
個人情報保護に関する法令や規範を調査し、適用法令と規範を入手、保管する。また、個人情報保護に関する責任権限、個人情報の収集・利用・提供及び管理、個人情報の開示・訂正・削除、教育、監査、リスクに対する予防処置、文書の管理についての内部規定を策定し、維持する。
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実施と運用
- 組織、役割、責任と権限
- 個人情報の収集目的の明確化
- 個人情報の利用および提供の原則と方法
- 個人情報の適正管理
- 個人情報の情報主体の権利
- 教育
- 苦情及び相談
- 文書管理
上記III.で策定された内部規定及び規定に基づいて作成された実施計画書に沿って1.から8.の事項を実施する。「4.個人情報の適正管理」には業務を委託する場合の業者選定、契約書の取り交わしの実施、また、「6.教育」では、教育プログラムの策定と受講者評価、全従業員の受講の徹底を行う。また、「7.苦情及び相談」は受付け窓口担当者を置き、対応結果を記録し保管することなどを確実に実施する。
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監査
自社の策定した個人情報保護方針と内部規定に基づき、適切に実施・維持・運用されているかどうかについて監査を行う。監査は内部監査規定に基づいて実施し、監査で指摘された不適合事項について是正処置を行う。また、監査は、不適合の発生を予防するための措置についても指摘し、それぞれの効果確認を行う。
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経営者による見直し
監査の結果やその他、個人情報保護のマネジメントに関し、定期的に経営者による見直しを行う。経営者の見直しの際には、個人情報保護のシステムの実施・運用状況、内部・外部監査の結果を含む不適合、個人情報保護に関する事故発生の有無等をインプットとし、、個人情報保護方針や個人情報マネジメントシステムの内容についての見直しをアウトプットとする。
これらの枠組みに沿った管理システムを構築し、運用することで個人情報の適正な取扱いをトータルに継続的に維持管理することが可能になります。中でもPDCAのCにあたる「V.監査」とAにあたる「VI.経営者による見直し」はこのシステムの継続的改善に欠かせない重要な機能です。特に、監査は、監査による不適合を明らかにするだけでなく、その不適合に対する是正処置や潜在している不適合に対する予防処置を講ずることに大きな意味があり、大きな個人情報漏えいや関係者とのトラブル発生の未然防止に機能します。
28.介護サービスの個人情報漏えい事例とその対策
介護サービス事業に関わる個人情報漏えい
介護サービス事業に関わる個人情報漏えい事件として公表されているものをみると、起こっている状況は他の分野で発生したものと特に特徴的なものはないように思われます。漏えい事件となった状況や原因にやや違いがあるいくつかの例を挙げます。
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利用者の個人情報含む書類が盗難にあったケース
介護施設において金庫の盗難が発生し、施設利用者192人分の個人情報含む書類が盗まれた。被害に遭った書類には、施設利用者192人の氏名、住所、電話番号、口座番号、銀行および支店名、口座名義人などの個人情報が記載されていた。朝に職員が出勤した際、事務所の鍵が壊され内部が荒らされ、金庫が盗まれているのを発見し、警察へ届け出た。
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利用者51名分の個人情報含むUSBメモリを紛失
介護保険利用者51名の個人情報が記録されたUSBメモリを紛失。
所在が不明となっているメモリには、介護保険利用者51人分の氏名、住所、電話番号、生年月日など個人情報のほか、介護予防サービス計画書や介護予防支援経過記録などの資料も保存されていた。○月○日にメモリを使用したのを最後に行方がわからなくなっており、○日に紛失届を提出。
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利用者情報をインターネット上に公開
インターネット上に公開されている地図検索機能に、送迎時の使用目的として利用者の情報を登録した際、設定操作を誤って、一般公開されていた。外部から閲覧可能になっていた。
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「サービス提供票」をファックスで誤送信
A様とB様の介護保険にかかる「サービス提供票」をC事業所にファックスで送付すべきところを誤ってD様の自宅へ送付していた。担当職員が一人でファックス番号を入れ番号間違いに気がつかずに送信してしまった。
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入居者の一部の個人情報がインターネット上に流出
介護老人保健施設を使用している入居者の一部の個人情報がインターネット上に流出した。介護職員が情報をUSBメモリーで自宅に持ち帰り、暴露ウィルスに感染したファイル交換ソフトが設定されたコンピュータに保管したため、流出した。
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駐車していた車両から顧客情報記載書類が盗難
職員が駐車していた車両から顧客情報記載書類が盗難された。原因は、簡易ベッド搬入組み立てのため、車両後部のハッチバックを開放状態のまま放置したため。
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通知書が入力誤りで別の事業者に誤送付
電算システムにおける提供事業者の入力誤りが原因で、在宅福祉サービス提供事業者に対する通知書が別の事業者に誤送付された。
こうした公になっている例は、事務所からの盗難、車上荒らし、インターネット上の流出、USBメモリー紛失、FAXの誤送信など、特に介護サービスに特有な原因や状況でもなく、業種の如何に関わらない情報漏えい事故と言えます。また、対策も防犯設備の改善、USBメモリや書類の保管・取扱いルールの見直し、FAX送信時や書類郵送時の二重チェックの実施等介護サービスに限らず取り組まなければならないものであります
介護サービスにおけるリスク
介護サービスにおいては、次の様なリスクが考えられます
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利用者の病歴、家族構成、現在の身体的・精神的支障内容、アセスメント結果、ケアプラン(介護サービス計画)、プリントアウトされたケース記録等すべての個人情報がファイルされた「個人ファイル」「利用者台帳」の存在と、これを常時使用している状態にあり、緊急入院時等やむを得ない場合はファイルごと持ち出す危険もあること
- 対策
- 持ち出しルールの作成(原則禁止)と徹底
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多数の個人情報書類と多量な個人情報の常時使用によるリスク
- 対策
- 利用目的に沿った情報のみに限定
- 保管期間を超えた情報の破棄
- 個人情報の評価別管理
- 放置や容易な閲覧可能状態に対する管理
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業務用に特定はされているが、携帯電話に残されている利用者氏名・電話番号、場合によっては家族とのメール内容
- 対策
- 携帯記憶データの日毎消去
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事業所、利用者宅、自宅間を往き来する訪問介護員が持ち運びする書類
- 対策
- 専用収納携帯バッグの使用
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居宅サービス事業所とサービス提供事業者間で使用されるFAXに記載された利用者情報
- 対策
- FAX情報のパソコン保存による紙情報の削減
- 同一番号の2回入力のみ送信されるFAX機の使用
- FAX送信に際しての先方への一報
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居室の表札、写真、ビデオ、面会簿、展示物の作者名など個人情報としての取り扱いの認識が弱いもの
- 対策
- 利用者への表示や掲載可否の確認
- 面会簿のカード化とカード入れBOXの設置
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親族であっても個人情報を提供してはならないケースがあること
- 対策
- 対応マニュアル、個別対応の情報の共有化
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実習生、ボランティア、施設内でサービスを行う外部委託業者が使用する個人情報の範囲と課する守秘義務
- 対策
- 誓約書の取り交わし
- 実習上必要な情報の限定使用
- 閲覧の許可制
- 口頭のみの情報提供
- 職員と同様の個人情報保護意識の徹底
- 使用後の回収の徹底
上記のほか、インターネット等外部接続のパソコンと施設内データ専用パソコンの使用区分の徹底、小型外部メモリーの使用禁止または持ち出し禁止、パソコン(特にノート型パソコン)の施錠保管や盗難防止器具の取り付け、不要なソフトのインストール禁止、ウイルス対策実施、ログインパスワードの設定とパスワード管理(更新、使用権限者特定)等のパソコンに関した個人情報漏えい対策は欠かせません。
これら具体的対策の実施と職員の意識強化のための教育の継続こそが肝要です。